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| ||||||||||天野勝の巻A|||||||||| |
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| 『まずはイメージを一流にすることだ』 |
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●超一流は決してタラレバを言わない
レイ・フロイドの言葉の中に『ファーストクラスの席で旅をすると、ファーストクラスのゴルフができるようになるものだ』というのがある。いかにも、プレイボーイだったフロイドらしい言葉である。
この言葉を、単に気障だと受けとめようとは思わない。別に、見栄を張れとフロイドが言っているわけではなく、精神的なイメージを言っているのだと思うからだ。
「プロを目指している今の若い子は、まず、技術をよくしようとするのが先なわけ。でも、イメージを一流にさせることをもっと考えたほうがいいと僕は思う。考える力を一流に。すると自然に技術はついてくる。何も考えずに、イメージも湧かずに技術だけよくしようとしたら、相当時間がかかる。だから、イメージトレーニングを積んで早く一流にしたほうがいい」
僕は、大きな課題をストレートパンチで浴びせられたような気がした。言葉で言い表すと簡単で、実は非常に難しいテーマである。
ゴルフは、技術、力学が20パーセントで、残りの80パーセントはメンタル。つまり知性、教養、人格、精神、創造力、想像力、ビジュアライゼーション、思考……などだ、という。これも、わかるような、それでいて不鮮明な部分である。実際、自分でゴルフをしていて、やっぱりスイングについてあれこれ悩み、迷い、試行錯誤して、もっと上手く打てるようになりたいと思う。スイングの何処かがなんとかなれば、きっと……と思う。それは、技術以外のなにものでもないわけで、残りが80パーセントもあるけれど、それは本当に必要なのだろうかと、声を大きくして言いたくもなる。
やっぱり、練習しなければ意味がない。上達しない。ボールをひたすら打つことから技術上達は始まるわけで、そこにどうイメージを介在させればいいのか。
「一流、二流、三流という分け方はないんだけど、でも、超一流や一流にいけばいくほど、まずタラレバの話は聞いたことがない。あそこで……だったら、……れば、という解説を一流選手は、まずしない。よく、勝った試合からは学ぶものは何もない。負けた試合から得るものがあるっていうでしよう。つまり、勝った試合は、ラッキーもあるしすべて許されちゃう。負けた試合は、タラレバばっかりなの。でも、そのタラレバをもしペラペラと喋っちゃったり、口に出してグチってしまうと、蓄積されるものが何も残らないんですよ。消される。一流といわれる人は、そういうことをしたらダメってことを、イヤっていうほど経験していると思うんだ。それをあえて言わないで通している。要するに、心の何処かに入れて、二度とそういう過ちを犯さないように、苦い経験をうまく生かそうとしている。だから、基本的には人間というのは完璧であり得ない。自分の欠点を直すとかでなく、その欠点をコースとか、メンタル面で利用しているんじゃないかな。100点をとろうとしても絶対に無理」
天野さんは、一気に喋った。
僕はふと思い出した。日米ゴルフ記者の対抗戦に出た時だ。2日間のダブルス戦を終えて、最終日は個人戦。前半、後半、トータルでそれぞれ1ポイントずつある。僕は前半に1ポイントをあげて、後半は接戦だった。17番ホールはドーミーホールとなった。ティショットは左の深いラフでかなりのツマ先下がりへ。そのすぐ前に小さな立木があった。直接グリーンを狙うには、僕の技術は及ばない。相手も大きく左に曲げていた。僕は、ティショットを打ち終えて、『フェアウエーにいったん出して、3打目勝負』と決めた。そしていざ2打地点にいくと、あろうことか、僕は無意識にグリーンを狙うクラブを持ってアドレスに入った。打ってしまったのだ。それは悲惨なミスショットだった。敗れ去った。
「大事な場面で大きなミスをしたんだから、いい経験をしたね」
と言ってくれたのは中部銀次郎さんだった。過ちが大きいほど、もう二度としないということである。
天野さんはそれを言っていた。しかも、それを口に出さないで心のうちに秘めておくほど、経験が生きるのだと。
●ゴルフの攻め方は三角形の底辺から始まる
ラウンド中の会話で、面白いなあと思ったことがある。ドライバーの話だ。
「ドライバーが下手なんですよ。飛ばないし……」と僕は言った。
「クラブって、14本ありますよね」
天野さんは、そう僕に諭すように喋り始めた。
「そして、いちばん神経を使うのがドライバーですね。まず、みんなそう思ってるわけ。でもね、ドライバーがいちばん許容範囲が広いんですよ」
そう言われてみれば、そうだ。
「例えば、隣のホールに飛んでいっても、0Bとかがなければまだ十分チャンスがある。そう考えるとドライバーはいちばん許容範囲が広い。広いということは、それだけミスが許されるわけでしょう。だからゴルフの攻め方っていうのは、三角形の底辺から始まるわけですよ。ティショットは、底辺。それだけミスの許容範囲が広い。グリーンに近づくにつれて、だんだん狭くなっていく。第1打が悪くても第2打でリカバリーすればいいし、第2打が悪くても第3打……だからグリーン上での許容範囲が最も狭い。僕に言わせれば、許容範囲の広いものに何度も素振りをして、最も狭いものには素振りをほとんどしないのが、アマチュア。それは逆ですよ」
そういうところからイメージや発想を変えて考えていくべきだというのである。自分の欠点をクローズアップさせるのでなく、長所を生かすというイメージである。
「相手の長所と自分の短所とが争っても、まず勝てない。でも相手の短所と自分の長所とが争えば、チャンスは十分あるでしよう」
相手を見抜く力というのが、それだ。
戸塚CCで日本マッチプレー選手権が開かれて、天野は青木功と争ったことがある。
その時に、天野は、18番ホールで青木に敗れた。
天野は、そこで多くのことを学んだ。
「青木さんは、18ホールで7回しかパーオンしなかったんです。僕は、全部パーオンしていた。17番ホールまで。作戦として、要するに寄せ勝負になると僕は青木さんに絶対勝てない。だから、ピンが何処に切ってあろうが、2打目はグリーンの真ん中を狙った。それで負けても、僕は別に悔しくないと思った。そういえばプロテストを受けた時もそう攻めたんです」
そうして18番ホールまでたどり着いた。
18番ホール。そこで天野は、青木の渾身の1打に心が動いた。
「2打地点から見ると、ベタピンのように見えたんです。100パーセント入る距離だと思った。キャディも途中まで見にいってOK距離だと言ったんです。その時に初めてピンを狙ったんです」
ボールは手前のバンカーに入った。天野はボギーで、青木はパーだった。敗れたゲームで天野は、多くのことを学んだのである。
●『ボールは真っすぐ飛ぶものではない』という悟り
天野さんのスイングで、ぜひ盗みたいと思ったのは、トップスイングからの切り返しだった。なんともいえないタイミングである。一瞬の間。これは持って生まれたものかもしれない。でも、その中に、
『ボールは真っすぐ飛ぶものではない』
という悟りがあるから、打ち急がないのだとも思った。
「初めてゴルフボールを見た時に、なんて大きいんだろうと思ったんです。卓球のボールはもっと小さいですから。それに、卓球では真っすぐ打つというのは不可能ですからね。絶対打てない。ディンプルもないし」
曲がることに恐れがなかったのだ。むしろ曲げて打つものだと思っていたのだろう。そして、どうやったらどう曲がるかのメカニズムを体に覚えさせた。
球筋からゴルフを始めたのだ。
それがわかるとゴルフは逆にやさしくなるということを、天野さんは教えてくれたのである。 |
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●天野勝(あまの・まさる)
学生、実業団と卓球で活躍。26歳でゴルフを始め、4回目のプロテストで合格。レギュラーツアー時代は、関東オープン(79年)など5勝。92年からシニアツアーに参加し、デビュー戦V、3週連続優勝を含む年間7勝で賞金王に。93年は関東プロシニアの1勝だけだったが、ベスト10入り11回(16試合)と安定感は相変わらずだ。175p、72kg。フジ開発所属。 |