| 伝説のアマチュアゴルファーのピュアな贈り物 久慈大洋ゴルフクラブ |
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| index | 【ゴルフの楽しさ、 それは技術の追求にとどまらず、 様々な要素を磨いていく努力にある】 アマチュアゴルファーという言葉が包み込む範疇ほど幅広く、曖昧模糊としたものはない。たったいま新製品のゴルフクラブを購入して、そのまま練習場に走り込んでボールを一球打った瞬間から、あなたはアマチュアゴルファーの仲間入りである。 かと思えば、毎日500発、1000発とボールを打ち込み、競技会に出て、将来はプロゴルファーを目指す、いわゆるプロ予備軍としてのアマチュアゴルファーも存在する。また、プロを目指すという道はまったく選ばずに、生涯をアマチュアゴルファーとして生きていく人もまた、その中に入る。 その両極の距離と、対極の哲学、生き方、ゴルフのとらえ方の、幅広さが渾然となっていても、プロフェッショナル以外は「アマチュアゴルファー」としてくくられているのである。日本のゴルフ人口は、およそ1250万人といわれている。従って、1250万種類のアマチュアゴルファーがいるということになる。 中部銀次郎もその中のひとりである。 いうまでもないことだが、これまでに日本アマチュア選手権のタイトルを6回獲得し、ほかのあらゆるアマチュアのタイトルをも奪ったといわれるほど強かった人だ。いまから25年前には、西日本オープンにも優勝している。「プロを制した」と大きな話題になった。そして、いまだにアマチュアゴルファーなのである。 しかし、そういう過去の成績や強さを並び立てることで、中部銀次郎の魅力は、語り尽くせない。この人の魅力は、記録や数字の奥にひそんでいるゴルフ哲学をもって語るべきだと思う。 頑固なまでにピュア(純粋)なアマチュアゴルファー……。 極端にいえば曖昧模糊なその言葉の中軸に、彼の存在感をひしひしと感じてしまうのである。 「アマチュアというのは、単にスコアだけを追い求めてゴルフをするわけではないのだと思う。スコアを磨くのではなく、ゴルフを磨いていくものではないかな。そのゴルフ……僕は、あえてゴルフィングといっているのだけれども、それは単に技術の追求にとどまらず、そのゴルフィングを包囲するだけの姿勢や教養、品性、人格、友情……といったさまざまな要素がつきまとう。それも磨いていかなくてはいけないと思う。そのバランスがうまく合ったときに、ゴルフの楽しさが、よりいっそう理解できる」 【何の変哲もないように見えて<らしさ>が漂ってくるコース造り】 茨城県久慈郡・久慈大洋ゴルフクラブ――。 中部銀次郎が、初めて設計・監修したコースである。母体は、大洋漁業株式会社。現在、大東油業株式会社の社長である彼は、その親会社のプロジェクトの一員として設計・監修を引き受けたのである。すでに芝張りも終わり、梅雨明けにはオープンという予定で順調に進んでいる。 このコースの設計・監修にも、アマチュアゴルファー・中部銀次郎のシルエットが、いくつか映し出されている。 土地、地形、行政指導……コース設計には、さまざまな規制がある。そういう中で造らなくてはいけない。従って「自分が100パーセント満足のいくコースは、造りえない」のが現状である。理想をいえば切りがない。でもその中で、らしさが表現でき、楽しめる、面白いコースをどう造り出せるかに、知恵を絞り出す。 このコースの距離は、18ホールで正味6660ヤード・パー72である。 「一般的に、いまのコースは7000ヤード以上でパー72というこだわりの風潮があるけれど、それ以下の距離でも、これだけ楽しめるんですよ、というコース造りを考えたんですよ。その人の技量は、距離の長さだけで測るわけではないはず。それに、やみくもにプレーヤーをいじめるようなつくり方は、しませんでした。技量を測る尺度を別のところで考えたわけです」 さらに、このコースで彼は、グラスバンカーを多用している。グリーン周りにつくグラスバンカーは「26以上あるでしょう」というのである。しかも、その形状は、サンドバンカーと変わりない。 理由は、ふたつある。 「グラスバンカーの芝を、4センチから10センチの間で伸ばすと、かなり難しいはず」 それでピンに寄せられる技量を問うわけだ。 さらに……実は、これがいちばん中部さんらしいな、と思うのだけれど……サンドバンカーの数が、29カ所と少ないのだ。 「いまのゴルファーの中で、きちんとバンカーの砂をならして上がる人が、少なくなったでしょう」――つまり、彼は、アマチュアとしてのマナーの低下を嘆き、なおかつその低下現象に挑戦しているのではないかと思えてならない。それを聞いたら、彼は、ニッと笑った。使用する「レイキ」も砂をならしやすいものを用いた。 技量を問う、ということでは、特に18番ホール・492ヤード・パー5にその一端が顕著にあらわれているのだが、グリーン奥からの奥行きが狭い。すぐに林がせまっている。 これにも理由がある。 「ワングリーンにしたことで、グリーンの平均面積は、240〜260坪ほどあるんですよ。たとえばピンをグリーンの真ん中に置いたとして、そこからグリーン奥のエッジまで平均で15ヤードあります。さらにピンから手前エッジまで15ヤード。グリーンをオーバーするということは、少なくともワンクラブ以上のクラブ選択のミスジャッジをしたことになるわけですね。そういう技量に対してのペナルティと考えています」 コースは、全体としてはオーソドックスである。妙に奇抜なデザインというわけでもない。何の変哲もないコース……しかし、その変哲もないという部分で、中部銀次郎の持ち味が、そこはかとなく漂ってくるのである。 涙がでるほどゴルフ哲学の中の「わさび」がピリリと利いている】 あらゆる技量を試すにあまりあるコースではあるけれど、かといってペナルティ型では決してない。それはやはりプレーヤーサイドの感覚から来るものなのだろう。 「アベレージゴルファーを中心に、ローハンディからハイハンディの人にまで楽しめるコースになったと思う」 いくつかのホールで池を配した部分がある。たとえば18番ホールのグリーンサイドもそうだ。最近の流行でいえば、水際を石で配して庭園的な雰囲気を出す手法をとるコースが増えている。が、彼は、それを拒んだ。 「ボールが石に当たったときに痛々しい」 という理由だった。 ゴルフコースは、同じ条件でも造り手によって大きく変わる。当たり前のことだが、このコースは、中部銀次郎のゴルフ哲学の中にある「わさび」が、ほどよくピリリと利いて、それはきっと手抜きのゴルフでもしようものなら、涙が出るほどわさびの辛さを味わうことだろう。 中部銀次郎は、すでに競技会に出て、チャンピオンシップを争うゴルフから遠ざかっている。自分の所属するクラブのクラブチャンピオンなどは別だが、日本アマチュア選手権で顔を見ることはできない。しかし、この人のアマチュアゴルファーとしての姿勢は、いまも昔も変わっていない。 ボビー・ジョーンズの言葉ではないけれどゴルフゲームに、チャンピオンシップのゴルフと楽しみのゴルフの二種類があるとしたら彼は、いまたっぷりと後者のゴルフを楽しんでいる。 ジョーンズの『ダウン・ザ・フェアウェイ』の最後の一文を想い出した。 それは、アマチュアゴルファーとして極みの領域に入ったジョーンズが、そういうチャンピオンシップの闘いのあとの自分を想像して書いた完結のくだりである。 ……いつか私のトーナメント時代が過ぎてしまったとき(中略)、 ひとつだけ予想できることは、 チャンピオンシップのある日曜日の朝、 私は私のおなじみのイーストレークのコースを、 父や友人と一緒に この精神的圧迫もなしにラウンドしているだろう。 この久慈大洋ゴルフクラブに、そんな中部銀次郎の姿が見えそうな気がしてならなかった。そういうムードの漂うコースであると、思えてならない。 |
| 構成・三田村昌鳳 週刊アサヒゴルフ 90年2月20日号/人気コース設計家シリーズ |