(1)
選手権に出場する、また目指す何百名というアマチュアたちは、みんな、たったひとつしかない“名誉あるトロフィ”を、自分の手にするために一生懸命戦って来るのである。
そして、その“名誉あるトロフィ”が大きければ大きいほど、重ければ重いほど参加することの意義があり、大きな意味をもつのであろう。そのために自分たちが可能な限りのベストを尽くし、その中で練習を積み重ねるのであろう。私は先週のこの稿で、ルールは“最低限”の自分にとっての救済であって、決して最大限にと考えるべきではないと書いた。
いつだったか、名古屋での試合のこと私のボールは、山の中へ入ってしまった。と、そこにはもぐらの穴があった。遠くにいる競技委員に「もぐらの穴があります」と伝えると「名古屋には、もぐらはいない」と答えが返って来た。遠くのほうでそう言われて、私は、そのまま打った。もぐらがいないのに穴があるというのはおかしい。ということなのであろう。しかし、私は、これで損をしたとも思わなかった。それでよかった。
ただ、ここで私が言いたいのは、ではその競技委員が、その場に来て、実際にその状況を判断して言ったものか。そうではなかった。つまりそこにも問題があると思うのである。われわれプレーヤー自身も、逆に競技委員も、もっと厳しくなければならないと思う。いやわざと厳しくしなくてもいい、的確に、明確に、ルールを忠実に守っていく姿勢があればいいのではないだろうか。
ことほどさように、いまのゴルフの中で、本質が失せてしまっているという状況は否めないだろう。そういった環境の中にあるからこそ、名誉あるトロフィもだんだん軽いものになってしまうのではないだろうか。そうなってしまったら、一体、何のための選手権なのかと言いたくなってくるのである。
誰もが、本当の意味でのゴルフの本質を求めて行く姿勢があったら、こんなに最高に素晴らしいことはないではないだろうか。
ちょうど1年ほど前になる。この私の稿を書くにあたって、私は、そんなことを訴えたいという気持をくんで頂いて、書き始めた。だから、ゴルフが単に技術、技術と、そんなことばかり優先して、全くコマーシャルリズムだけの方向に動いてしまっていて、ゴルフ本来のものについて余りにも書かれて(知られて)いないという中で、私は、私なりに今まで感じとって来たゴルフというものについて書かせてくれるなら、と引き受けたのである。
今まで私が、この稿に書いて来たものが、アマチュアリズムの中に生きていることではないかと思う。
昔は……というような言葉から始めて行くと、古いとか、年寄りじみたとか、何をノスタルジアを……と言ったようなことを言われるかも知れないが、でも、これは決してノスタルジアでも何でもない、私ばかりではなく、何人かの人々はおそらく、本当の意味でアマチュアリズムを考え、悲しんでいると思うのである。
私は、ここであえて言いたい。ゴルフ、その本質を本当に追求して欲しい。そして、アマチュアリズムということの上で、プレーし、ゴルフを考え、ゴルフを愛して欲しいのである。
(2)
もう何年前になるだろうか。横浜カントリーで私は、ジャック・ニクラウスと一緒にプレーをした。
プレーが終わって、私のニクラウスに対する第一印象(感想)は、彼が未だにトップ・プロとして世界にありながら、アマチュア精神の持ち主である――ということであった。非常に、抽象的なものなので、アマチュア精神に対する解説というのは、具体的にひとことでは、言い表わせない。ただ、まず私は、そう感じたのである。
ニクラウスが、アマチュアとしての長いキャリアがあることは、ご存知だと思う。そして、未だに、その精神を持ち続けていることによって、おそらく自分のゴールを不可能に近いところまでに置いて、しかも、休むことなく求め続けているという事実。私自身の解釈のひとつであるが、ニクラウスが、どんな場合のプレーでも、決して自分のまずい部分は見せないで、つねにベストを尽くしているということ。人間だから、好不調の波はある。しかし、その不調のときの自分を十分知っているし、それを決して見せようとしない点。彼が、あれだけの地位を決して崩すことなく、まい進しているという点。細かくあげて行くと切りがないが、おそらく私がこう感じたように、ニクラウスという人間を深く見た場合、アマチュア精神とニクラウスのつながりにぶつかるであろう。
――総じて、私がここでもうひとつ言いたいことがある。アマチュアの選手権というものに対して、もっと注目してもらいたいということである。こういった環境の中でも、本当のゴルフを求めてプレーをしている人も何人かいるのである。そして、参考にもなると思う。
ルール、マナー、エチケット。そしてその中からゴルフの本質を求め、ゴルフの精神を求め続けることは、確かに難しいことかも知れない。しかし、それがなくなったら、何のためのゴルフ、何のためのアマチュア・ゴルフなのかということなのである。もし、あなたが、ゴルフの技術ばかりに熱を入れないで、もっと総合的にゴルフというものを見つめ、求めて行ったならば、きっとあなたのゴルフの内容は、大きく変わって来ることだろう。ゴルフというと、どうも技術が全部を占めているだけのもののようにとられてしまっているが、そうではなく、技術はほんの一部であるという意識をもって欲しいのだ。
数々のトーナメントが日本でいくつも増えているわりには、私は、何故か本質を知らないで(間違って伝わったままで)いるという現状をもっと知って、それぞれが本質をとらえるべく考えて欲しいのである。そうなったときに、ゴルフがこの日本の中で本当に素晴らしいスポーツとして発展して行くのではないかと思うのである。しかし、単に日本のゴルフがだめだと決めつけているのではない。日本にも、たくさん素晴しい人々がいるのだ。そのことも知って欲しいのである。
