中部銀次郎

数字の持つキャパシティ

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(1)

ショックの吸収。競り合いになるほど外的にも、内的にも、あらゆるかたちで精神的ショック、つまりプレッシャーがかかって来る。ゴルフは、独りのゲームである。だからこそ、相手がいて、競り合うほどに、相手と自分に左右されやすいのだ。

相手のティ・ショットが、左のラフに入ったとする。次に自分が打つ番である。自分のボールは、フェアウェイの真ん中に落とすか。だが、もっと相手を徹底的に“打ちのめす”方法がある。相手の落とした左ラフの地点よりも、やや手前の同じ状況の所にボールを意識的に打ち込んだらどうか。第2打は、自分から打つ番である。その第2打を、ホールから1メートルぐらいの所に落としたら…。相手のショックは、何十倍も大きく広がって来るはずである。何故なら、自分がフェアウェイ真ん中に落とし、ピタリと第2打をホールに近づけても“当然”の部分が多い。が、同じ状況で寄せて、しかも先に、それをやってのけられたら…。相手は、打てなくなる。この例題は、いかに相手に大きなショックを与え、自分を有利にするか、ということだが、逆に自分がショックを与えられたら…。そのためのショックの吸収。つまり、ショック・アブソーブをできるだけ多く自分の中に備えていたら。少なくとも“勝つ”ために必要な“何か”の部分に役立たせることができるだろう。

石井哲雄プロの<相手のボールがグリーンに乗ったら“ひとつ”と思え>が、そのひとつであったことは、言うまでもない。特に、私のようにパットが下手な人間にとって、これほど大きなアドバイスは、なかったろう。パットの名手と言われる相手と戦っても、私のショック・アブソーバーのお蔭で助かったことすらある。

大学2年に入って、私は、今まで考えなかったことを考えるようになった。それは、藤井義将プロの言葉からである。これも、ショックの吸収という精神面での発想である。石井哲雄プロの言葉が外的(つまり相手)から来るショック・アブソーバーなら、今度は、逆に内的(自分)のものからである。

話は、こうである。

いかに、スコア・メイクをして行くかということだ。よく、クラブハウスに戻って聞く言葉に「あのパーは、本当に惜しかった」「あのボギーは、頭に来た」「ラッキーなバーディだった」……そんな言葉を耳にする。

もしかしたら……という言葉が裏にひそんで話すことが多い。もしかしたら、ボギーで切り抜けられたのに……もしかしたら、パーがとれたのに……である。

ところが、実際スコア・カードに書くものは何であろう。まさか「きたないパー」「惜しい4」「もったいない4」だとかは書かない。当然だ。惜しい4でもきたない4でも、4は「4」としか記入しないではないか。

(2)

藤井義将プロが言ったのは、そこである。3オン1パットも4。4オンノー・パットも4。2オン2パットも4である。

つまり、3、4、5というホールがある。その数のアローアンス。その3、4、5という数字の持つ柔軟性を知るべきではないか。と言うことである。

「そう考えれば、もっと楽にゴルフができるのではないか」

と言ってくれたのである。

それを聞くまで、私は“数”というもの自体の探求は、全くなかったのである。要するに、打って、入れていくつ。ということしか判からなかった。

《1975年全米プロ選手権。3日目16番ホール。625ヤード。パー5。ここでニクラウスは、もの凄い4オン1パットをやってのけた。ティ・ショットを左の林の中。アンプレヤブルを宣言して、60ヤードティの方へ戻って第3打。それが右のラフ。しかも前には大きな木がある。ピンまで137ヤード。9番アイアンで打ってグリーンに乗せる。ピン奥10メートルのパー・パットを入れた》

ニクラウスにとっては、かっこいいパーではなかった「バカげたこと」と言うように、パー5に対して最高に遠回りした「5」である。

――当時、私のゴルフには虚栄というか“見られている”かっこよくパーを取ってやろうという気持ちも多少あった。が藤井プロの話を聞いて、変わったのである。同時に、あらゆる場合に遭遇しても強くなった。逆に言えば、楽になったのだろう。パー4のホールであれば、4回打つまでは、何があってもいいわけだ。4回打つまでは、捨てない。で、4回目に非常にピンチに立たされたら、つまりニクラウスの例で言えば、5回目(10メートルのパット)のピンチ、が来たら、4にならないように、5にならないように考え、万全を尽すことに集中すればいいのである。

考えかたの上での変更。ことばの上での自分なりの解釈、これが大切なのである。これこそ、ショックの吸収なのだ。

勿論、これを受け入れられるだけの技量、思考は必要である。例えば、ボールが林の中に入った。第2打を考えると、まずグリーンの方向に打つという本能的な意識が働く。で、打ってキンコン林の中でボールが遊んだあとに「ちくちょう。もういいや」となってしまったら、メダル・プレーの2番ホールなら、残り70ホールは捨てなくてはならないことになる。ならば、どこでもいいから出せる所に出して、その中で、できるだけピンを狙い易い所は?を捜してそこに落とすことが必要であろう。そして次でカバーする。それすらできなかったらこれはもっと練習をしなければならない。

第2打、3打、或いはパット。トラブルに入ったあと何かひとつが良ければ、少なくともパーをとるチャンスはある。やっと第3打がグリーンに乗った。そして1パットで入った。確かに状況としては“危ない”パーであったが、スコア・カードには、そうは書かない。4は、4だ。――数字の持つ幅。それは、4なら、3.1から4.9まで、スコアには「4」と書けるわけだ。それを知ったとき、私のプレーは、より楽に攻めることができたのである。これは“いいショットが出る”というより何十倍も自分自身の“ため”になって、スコア・メイクに欠かせないものとなったのである。