2003年(平成15年)マスターズ4月15日火曜日……最終日……スポーツ新聞
▼スポーツ報知
左打ち!!ウエア初V
男子ゴルフメジャー第1戦第67回マスターズ
《最終日》
13日午前10時50分(日本時間午後11時50分)スタート、米ジョージア州オーガスタ・ナショナルGC、参加49人(うちアマ3)、晴れ、弱風、観衆4万
【オーガスタ(米ジョージア州)13日=竹内達朗】マイク・ウエア(32)が左打ち選手として大会初優勝。68で回った2位スタートのウエアは65のレン・マティース(米国)と通算7アンダーで並び、1990年大会以来13年ぶりのプレーオフに突入。1ホール目(10番)に大会初のボギー決着でカナダ人選手としてもメジャーを初制覇した。史上初の3連覇を狙ったタイガー・ウッズ(27)=米国=は75で2オーバー15位。片山晋呉(30)=フリー=は8オーバー37位だった。
「やりやすい方で打て」
ニクラウス助言から20年……「感謝」
メジャー2人目
レフティー初、カナダ人初の優勝を決めるパットは、20センチのボギーパットだった。「本当はボギーなしで回りたかったけど…。この事びを何と表現すればいいか分からない」ウエアは、よれよれになりながら栄光のゴールにたどり着いた。
10番パー4でのプレーオフはドタバタ劇だった。マティースは第2打を大きく左に曲げたうえ木が邪魔でカップを狙えず、ピン右8bに3オン。ボギーパットは大きくオーバーした。ウエアもピン右下15bから3パット。サドンデス制となった76年大会から初のボギーでの勝利だった。
ペンは右、野球は左投げ、テニスはサーブだけ左でプレーは右。器用な少年はプロゴルファーを志した13歳の時、マスターズ6勝を含めメジャー最多の18勝を誇るジャック・ニクラウスに手紙を書いた。「ゴルフは左打ちでもいいのでしょうか」返事は「やりやすい方でプレーしなさい」。それから約20年。左ドッグレッグが多く左打ちに不利なコースを制し、メジャーでは63年全英オープンのボブ・チャールズ以来2人目のレフティー王者が生まれた。
オフにNHLキャピタルズの練習に参加するほどのアイスホッケー好き。メジャーでは99年全米プロの10位が最高だった。だが、世界ランク10位の実力者は、今季の賞金ランクでウッズを抜きトップに立った。「もちろん、手紙は今も大事に取ってある」尊敬する帝王に、一歩近づいた。
母国カナダは左打ちが22%
○…ウエアの母国カナダでは、ゴルフ人口のうち22%が左打ち。米国の3%に比べかなり多い。両サイドから打つ必要がある国技のアイスホッケーの影響が大きいという。2001年からウエアとクラブ使用契約を結ぶテーラーメイド社の広報は「ウエア選手の存在で、左打ちのユーザーからの問い合わせは多くなりました」と話す一方、「日本では左打ち用クラブ市場は全体の5%にも満たないでしょう」とのことだった。
◇ウエアの優勝道具▽1W R580プロトタイプ(ロフト9.5度、シャフト=フジクラスピーダー757、硬さX)▽3、4W200スチール▽3〜9I、PW 300シリーズ=以上いずれもテーラーメイド▽ウエッジ ボーケー54度、60度▽パター スコッティ・キャメロン・ニューポート▽ボール プロV1=以上いずれもタイトリスト▽ウエア ゼニア▽靴 フットジョイ
マガート
(首位でスタートも、3番バンカーで自打球が当たり、トリプルボギー。12番では小川に2発入れ、8の大たたき)「できることなら、もう一度、プレーさせてほしい」
◆マイク・ウエア
1970年5月12日、カナダ・オンタリオ生まれ。32歳。米ユタ州のブリガムヤング大卒。92年にプロ入りし、93年はカナダツアー新人王。98年から米ツアーに本格参戦し、翌年のエア・カナダ選手権で初優勝。メジャーの最高成績は99年全米プロの10位。ツアー通算6勝。家族はブリシア夫人と2女。175a、70キロ。
◇カナダ選手のメジャー
過去最高は69年マスターズのジョージ・ヌードソン、85年全米オープンのデーブ・バーの2位。
◇プレーオフ
13年ぶり12度目。76年のサドンデス制導入以降6度目。ボギー決着は初、1ホール目での決着は21年ぶり2度目。
1ホール目力尽く
「満足」2位
マティース
1イーグル、6バーディーの快進撃でグリーンジャケットは目の前だったが、18番のボギーが響きプレーオフ。1ホール目で力尽きた。「マスターズは特別な試合だ。ここまで戦えて満足」アマチュアで出場した1988年以来、15年ぶり2度目のオーガスタGC。「ここは本当に美しいところだ。また、帰ってきます」実は左利きの35歳は晴れ晴れとした表情だった。
来年出場権逃すも
自己最高37位
片山
そろいのテンガロンハット、黄色いシャツの応援団10人に見守られたが、来年大会の出場権(16位以内)はつかめなかった。しかし、2001年の40位を上回る大会自己最高の37位。「ここのパットの打ち方はつかんだ。来年もここに来る」ロフト角6度の(秘)パターが奏功。さらなる飛躍を期し「知り合いのゴルフ場に無理を言って造ってもらう」と仮想オーガスタ″の超高速グリーンを日本に造る計画を明かした。
3番左打ち不発15位
ウッズが"レフティー"になった。350ヤードの3番パー4、右の林からの第2打。ボールが木の根元につき、やむなく左打ちに挑んだが、フェアウエーに戻すので精いっぱいだった。そこからアプローチを2度失敗してダブルボギー。「左打ちは今までで一番難しいショットだった。やはり3連覇は簡単なことではない」大会初のレフティー優勝を達成したウエアに、史上最大の逆転優勝、史上初の3連覇を阻まれたことはあまりにも皮肉だった。
最終組をはるかに上回るパトロンに夢を与える出足だった。2番で第1打を325ヤードかっ飛ばし、楽々と2オンのバーディー。
しかし、勢いに乗って迎えた3番の第1打で、これまでの3ウッドからドライバーに握りかえたのが無謀だった。過去のメジャー8勝は、すべて最終日を首位で迎えてのもの。追う立場を知らない悲劇だった。前年優勝者として、ウエアに栄光のグリーンジャケットを着せた。悔しさを押し隠し、満面の笑みを見せたことは、世界最強ゴルファーの誇りだった。
◇過去の3連覇挑戦者
65、66年大会を制したジャック・ニクラウスは、67年は予選落ち。89、90年Vのニック・ファルドも91年は5打差12位。

▼サンスポ
ウエア初V
トップと2打差の2位からスタートしたマイク・ウエア(三二)=カナダ=が、通算7アンダーで並んだレン・マティース(三五)=米国=との大会13年ぶりのプレーオフを1ホール目で制して優勝。メジャー初V、ツアー通算6勝目をあげた。マスターズ史上、レフティーの優勝、カナダ選手の優勝は初。今季米ツアー3勝目で賞金ランクも首位に立った。史上初の大会3連覇を狙ったタイガー・ウッズ(二七)=米国=は75と崩れ、通算2オーバーで15位。片山晋呉(三〇)は通算8オーバーで37位だった。
13日午前10時50分(日本時間13日午後11時50分)スタート▼晴れ、気温21度、風速5b▼コース=米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7290ヤード、パー72)▼参加49人(うちアマ3人)▼賞金総額600万j(約7億2000万円)、優勝108万j(約1億3000万円)▼グリーン=ベント▼ギャラリー=3万5000人
13年ぶりのプレーオフ1ホール目で決着
帝王のアドバイスと"ウッズの教え"守って
抱き合った。そして、キスした。10番グリーン。夫人のブリシアさんと喜びを分かち合う。ウエアがメジャー初Vだ。
「信じられない。最高の気分だよ!」
通算7アンダーで並んだマティースとのプレーオフ。1ホール目の10番ミドル。グリーン左に外しボギーも逃したマティースに対し、ウエアは3bのパーパットを外したが、大会史上初の「ボギー決着」で万歳だ。
マスターズ67回目にして史上初のレフティーV。ゴルフで左打ちは"不毛"とされる。クラブの種類が少なく、ゴルフ場も設計者が右打ちばかりのため、左には不利が多いといわれる。そんな少数派の代表が、頂点へ登りつめた。
6歳のとき左打ちでゴルフを始めた。「ゴルフは右の方がいい」という話を聞いた13歳のとき、ジャック・ニクラウスにこんな手紙を送った。
『ゴルフがうまくなりたいです。右打ちに変えた方がいいですか?』。帝王から『無理に変えてもよくない。そのままにしなさい』という返事が届いた。「忘れられない思い出」と瞳を潤ませたウエア。手紙は今でもユタ州の家に飾ってある。
同じ頭文字「W」を持つウッズの3連覇を阻んで、今季米ツアー3勝目。賞金ランクでも王者を抜いて首位。しかし、オーガスタ攻略はウッズから盗んだ。
01年の予選で同組。ウッズは意外なほど安全にグリーン中央を狙い続けた。「タイガーが優勝してきた戦い方を見て、それを守ってプレーした」。この日も随所で"ウッズの教え"を実践した。
「クラブが少ないとかの事情は分かるけど、もし子供が自然と左打ちの握りをしたら、お父さんはそのままにしてあげてほしいな…」
ニクラウスに導かれ、タイガーロードを進んだ。栄光のグリーンジャケットが初めてカナダに渡る。またひとつ、オーガスタに歴史が刻まれた。
ウエアの使用ギア
1W=テーラーメイド・580プロトタイプ(ロフト角9.5度、長さ45a、シャフト硬度X)▼3W(ロフト角15度)、4W(同17度)=同・200スチール▼3〜9I、PW=同・300MW(マイク・ウエアプロトタイプ)▼SW(ロフト角54度)、LW(岡60度)=タイトリスト・ボーケイデサイン▼パター=スコッティキャメロン・ニューポート(ピン型)▼ボール=タイトリスト・プロV1
マイク・ウエア
1970年5月12日、カナダ生まれ、32歳。ブリッグハム大卒。92年プロ転向。98年から米ツアー参戦。99年のエア・カナダでツアー初優勝。00年アメックス選手権、01年ツアー選手権など米ツアー通算6勝。今李3勝目。昨季は優勝がなく賞金ランク78位(84万3891j=約1億120万円)。同ランクの最高は00年の6位。家族は夫人と2女。1b75、70`
1〜2bを外さなかったウエア
ウッズが3番のミドルで、ドライバーを持って右の林に入れダブルボギーにした。「なぜ、いつものようにアイアンで打たないのか」という疑問はあるだろう。しかし、クラブ選択のミスではない。その"前段階"が存在する。
今週、本調子ではなかった。早めに仕掛けなければ届かない。オーガスタの距離が長くなって、昔のように強烈な追い込みができないことも、ウッズに勝負を急がせた理由だろう。ミスショットは結果論で、むしろ「そうしなければならない今週の状態」が問題だった。負けるべくして負けた、といっていい。
優勝したのはウエア。必ず一度、テークバックを確認する。初心者みたいだが「ここにこうやってテークバックをあげるんだよ」という意識付けは大切。うまくなると、ほとんどの人が省いてしまうが、狂いをなくすためにプロアマ問わずマネしていい動きだ。
勝因は1〜2bのパッティング。あれだけの傾斜があるグリーン。どんなにうまくプレーしてもこの距離は残る。優勝争いをした選手の中で、もっとも「1〜2bを外さなかった選手」がウエアだった。(本紙専属評論家)
データBOX
マスターズ67回の歴史の中で、プレーオフは90年(ファルドがフロイドを破ってV)以来、13年ぶり12度目。76年にサドンデス制が導入されてからは6度目。ボギーによる決着は初めてで、1ホール目での決着は21年ぶり2度目。
左打ち選手のメジャー制覇は63年の全英オープンで健勝したボブ・チャールズ以来2人目。マスターズでは史上初。
これまでカナダ選手のマスターズ最高成績は、69年にジョージ・ヌードソンが入った2位。ほかにカナダ選手のメジャー大会成績には、85年全米オープンでデーブ・バーの2位がある。
脇が開く悪癖はシャツを挟む
プレーオフで敗れたマティース
プレーオフで敗れたマティースは、懸命に声をしぼり出した。
「悔しさはある。でも自分にとって2度目のオーガスタは、すごく特別なものになったよ」
イーブンパーの8位からスタート。アドレスに入る直前、右手でシャツ左脇のたるんだ部分を右に引いて脇にはさみこむ。そうすることで窮屈になった左脇が、開くという悪癖をおさえこんで振れる。独特のルーチンを繰り返して65の猛チャージをみせたが…。
アマチュアだった88年(予選落ち)以来15年ぶりの出場、プロとして初のマスターズで優勝の快挙を逃した。
「マイク(ウエア)はすばらしい選手だよ」。勝者を称えたマティース。実は左利きなのにゴルフは右打ちにしたひとり。あまりに皮肉な話だった。
3番トリプル、12番「8」大叩き
マガート砂と共に消えた
単独トップで出た39歳のマガートが、バンカーのトラブル連続で大崩れ。5位に沈んだ。
「もう一度プレーをやり直したい…」。3番ミドルでは、左バンカーからの第2打がアゴに当たって跳ね返り、胸を直撃。まさかの2打罰で、トリプルボギー。その後、2バーディーで再び優勝争いにからんだと思ったら、12番で2度目の悪夢だ。
グリーン奥のバンカー、左足下がりの状況から放った第2打は低く飛び出し、反対側の池へ。ドロップエリアからの弟4打も池ポチャ。打ち直しの第6打も寄らず「8」の大たたきを演じた。
「奇妙な日だった」とつぶやいたのも無理はない。ボギーもダブルボギーもなし、5バーディーを奪って75。ジョージア州アトランタは、映画「風とともに去りぬ」で有名な街。ほど近いオーガスタで、マガートは砂とともに去った…。
片山37位も収穫
戦える見通しついた
収穫あり。片山は2バーディー、4ボギーの74。通算8オーバーの37位で終えたが「ここで戦えるという見通しが立った」と胸を張った。
「ショットはやれる。あとはラウンドの回数をこなして、攻め方とかグリーンとかをつかんでいけば…。もうちょっとで上にいける」と来年以降の飛躍を宣言。帰国後は、24日開幕の「つるやオープン」から日本ツアーに参戦する。
通算5アンダーで3年連続3位のフィル・ミケルソン(米国)
「5アンダーか6アンダーを目標にしていたけど、それよりいい選手が2人いたね。最終日の68には満足している」
優勝争いにからみながらインで失速して6位のビジェイ・シン(フィジー)
「うまくプレーできていたが、パットが入らなかった。12番と13番のボギーで流れをつかみ損ねた。また来年だ」
通算1アンダーの6位に終わったアーニー・エルス(南ア)
「いいプレーはできたんだけど、スコアにつながらなかった。もう少し流れに乗れていたら…」
ウッズ奇跡は起きずV3逃す
3番で痛恨のダボ…15位に沈む
3連覇を逃したウッズはホールアウト直後、淡々と質問に答えた。
「みんなの期待に応えられなくて、自分でもがっかりだよ」
2番のバーディーでトップと3打差。だが直後の3番で、大きなミスを犯した。
「ドライバーでティーショットを打ったのは悪い決断だった。あれでモチベーションを失ってしまった…」
350ヤードと短いパー4。いつもはアイアンで打つ第1打を「左から右の向かい風だったし…」と1Wで強振。しかし、ボールは大きく右へ出て林の中。第2打を左打ちで花道まで出したが、アプローチを2度ミスしてダブルボギーだ。この日75。通算2オーバーで15位に沈んだ。
「あとになって考えれば、3番はアイアンにするべきだったね。でも仕方ない。勝ちたいと思ってもすべて勝てないのがこのスポーツだから…」。史上初の3連覇も、年間グランドスラムも消えた。再出発。プレッシャーから開放された王者が、大きく息を吐いた。
通算3オーバー21位でベストアマのリッキー・バーンズ(米国)
「ベストアマは(来年の出場権を得る)16位よりも意味のあることだ。夢は終わった。あす、アリゾナ大に戻って授業に出る」
8位のスコット・バーブランク(米国)はウッズに対し
「彼も人間ってこと。ただし、きょうだけかもしれないけどね」
▼日刊スポーツ
ウエアV
◇13日(日本時間14日)◇米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7290ヤード、パー72)◇賞金総額600万j(約7億2000万円)◇出場49人(うちアマ3人)◇晴れ
【オーガスタ=木村有三】左打ちのマスターズ王者が誕生した。マイク・ウエア(32=カナダ)が通算7アンダーで並んだレン・マティース(35=米国)をプレーオフ1ホール目で破りメジャー初優勝を果たした。レフティー″のメジャー優勝は63年全英オープンのボブ・チャールズ以来40年ぶり2人目。カナダ人のメジャー初優勝ともなった。史上初の3連覇を狙ったタイガー・ウッズ(27)は15位、片山晋呉(30)は37位に終わった。
プレーオフはボギーで決着
疲れきった体に快感が走った。勝利を決めた10番グリーンに、プリシア夫人が駆け寄ってくる。両腕を広げて迎えたウエアは力強く抱きしめた。「信じられない。この気持ちは言葉にできない」。97年までの6年間、オーストラリアツアー転戦に付き添ってくれた妻との最高の舞台での抱擁。パトロンの拍手が鳴りやまない。マスターズで歴史を築いたのはV3を狙ったウッズではなく、強いレフティーだった。
苦しい立場にも、その集中力に陰りはなかった。マティースの猛烈なチャージで逆転された。その3打差を確認し迎えた13番。外せばVチャンスが遠ざかる6bのバーディーパットをねじ込んだ。「重大なパットだった」とウエアも振り返る勝負どころで、再び追い上げるリズムをつかんだ。
15番では91ヤードの第3打を1.5bへつけた。最終18番でも微妙な2bを放り込む。今大会平均パット数は1.444で4位。鋭い眼力で難解なグリーンを読み切り、正確なストロークで刻み、ライバルを追い詰める。最終ラウンドはノーボギー。ツアー5勝すべて逆転という、ウエア得意の展開だった。
帝王から手紙
右に変えるな
通算7アンダーで首位に並び、大会13年ぶりのプレーオフに持ち込んだ。10番ミドルでのプレーオフ1ホール目でマティースが自滅の6。ウエアもボギーの5だったが念願の勝利をもぎとった。左打ちでは63年全英オープン優勝のボブ・チャールズ以来、史上2人目のメジャー制覇。そのチャールズとは01年全英オープンの練習ラウンドを同組で回った。「彼もこの優勝を喜んでくれたはずだ」。偉大な先輩に続くことができた。
帝王の言葉を信じ、レフティーを貫いてきた。13歳のとき、右手で文字を書き、左手でテニスのサーブが打てたウエアは「左から右打ちに転向したほうがいいのか」とニクラウスに手紙を送った。「自然に打てる方でいい」と返事の書かれた手紙は、今も自身のオフィスの机にしまってある。
メジャーでは99年の全米プロの10位が最高だった。「いつかここ(マスターズ優勝会見の場)にいられる日が来ると信じてきた。これからは左利きの人が右打ちにされる、そんな時代はなくなるだろう」。世界中のレフティーを励ます大きな1勝。誇りに満ちたひとみは輝き、真の名手(マスター)に仲間入りした。
俺もレフティー
ミケルソンはまたあと一歩
○…ミケルソンはまたもメジャータイトルを奪えなかった。2番で20bを沈めるバーディーで勢いに乗り68で回ったが、プレーオフにあと2打届かなかった。「難しい日曜日のオーガスタで、とてもいいプレーができた」と悔しさをこらえ、同じレフティーとして初めてマスターズに優勝したウエアを「とてもいいプレーをしたね」とたたえた。メジャー通算43試合日のマスターズは3年連続の3位。「いつか勝つチャンスはあるはず」と自分に言い聞かせていた。
俺も普段は左利き
マティース…木が邪魔した
○…マテイースが「変則」左利き対決に敗れた。ウエアとのプレーオフ。10番ミドルの第2打を引っかけてグリーン左へ。第3打は前方の木が邪魔し、ピンを狙えずカップまで9bの距離に乗せるのが精いっぱいだった。パーパットも5bオーバーし、その返しも入らず万事休した。本来は左利きも、ゴルフでは右打ちのマテイースは「アプローチが強すぎた」。65の最終日の猛チャージには「2度目のマスターズは、とても素晴らしいものになった」と満足感を抱いていた。
マガート悪夢
○…首位スタートのマガートには悪夢の1日となった。3番ミドル。フェアウエーバンカーからの第2打が土手に当たり跳ね返り、自分の胸に当たってしまった。ペナルティーを受け、第5打での打ち直し。結局、このホール、トリプルボギーとし脱落した。
◆ウエアとマスターズ
今回が4回目の出場で00年からの順位は28位、27位、24位。昨年メジャーは全米オープンは予選落ち、全英は69位、全米プロは34位。
◆マイク・ウエア
1970年5月12日、カナダ・オンタリオ州生まれ。米ブリガムヤング大を卒業後、92年にプロ転向。93年カナダツアー新人王に輝き、98年から米ツアー参戦。99年エア・カナダ選手権で初優勝し、00年の世界ツアー、アメリカン・エキスプレス選手権、01年ツアー選手権でも優勝。昨季は0勝で賞金ランク46位。今季は3勝目で通算6勝目。趣味はアイスホッケーと釣り。家族は美人と2女。172センチ、70`。
◆ゴルフでの左利き
ゴルフ界では少なく、競技人口の5%程度とみられている。日本でトッププロとなったのは羽川豊のみ。日本ゴルフツアー機構(JGTO)には現在195人が登録するが、左利き選手は0人。日本プロゴルフ協会(PGA)では3889人のプロの中、わずか10人。人口が少ないことから、道具の調達が難しく、左利きを教えられる指導者も少ない。
運使わず勝ったウエア
沼沢聖一の目
ウエアのゴルフは終始堅実でした。コースを研究し、冒険はせずに安全場所にショットを打ち、パットラインの読みも的確でした。米国のマテイースを応援するパトロンも敵に回す逆境にもあわてなかった精神力。不利と言われた左利きで状況に応じて球筋と、高低を打ち分けた技術。メジャーを制覇する「運」という要素を使わずに勝ったことも驚きです。
一方でウッズ。3番ミドルでの第1打に疑問の声も出てますが、私はあの判断は聞達っていないとみます。アイアンで打てば80〜90ヤードの距離が残り、2打目はサンドウェッジ。しかし、あの幅の狭いグリーンではウッズのスピン量の多いショットでは、ピンに絡めにくく、こぼれる恐れもある。そのためドライバーで打ち、できるだけグリーンに近づけようとした。結果的にフェード狙いがスライスとなりましたが、あれはウッズならではの判断。成功すれば、また展開は大きく変わりました。ただ4日間を通してウッズは波があった。3週前のベイヒル招待がピークで、食中毒をきっかけに調子を崩したことは否めません。来年のマスターズでは本調子のウッズを見たいものです。(プロゴルファー)
日本プロゴルフの左利き第一人者で82、83年マスターズ出場の羽川豊 同じ左利きとして、ウエアの優勝はとても喜ばしいです。オーガスタはコース設計上「右のドローヒッターが有利」と言われてきましたが、ウエアはその軌道と同じで距離の出るフェードを打っていました。
強気裏目悪夢3番
王者ウッズでも史上初の「壁」を破ることはできなかった。「失望した」。43位のぎりぎりで予選を通過、前日の66で一気に5位まで浮上。最終日は首位に4打差でスタートしたがマスターズ初の3連覇は夢と消えた。
悪夢は3番でやってきた。350ヤードと最も短いパー4。第3ラウンドまで2番アイアンを握っていたティーショットに、この日は1番ウッドを引き抜いた。「ドライバーの調子が良かったから」の勝負の選択は某日に出た。ボールは右林へ。第2打はスタンスが取れず、芸術的な「左打ち」で脱出してみせた。だがミスが尾を引いていた。アプローチを2度失敗し、ダブルボギーにしてしまった。
直前の2番ではバーディーを奪い、首位との差は3打だった。残りホールを考えても焦る必要はなかった。強引な作戦。「判断を誤った。無謀だった。自分のウェッジを信じて刻むべきだった」。これまでのメジャー8勝はいずれも最終日を首位で迎えて勝ち取ったものだった。「最終日65を出せば勝てると思った」。初の逆転でのメジャー優勝を狙う気持ちが空回りした。
「3連覇? 簡単じゃないってことだよ。誰もしたことがないんだから」。表彰式では優勝のウエアにグリーンジャケットを着せる役に回った。主役の座を護った王者は、悔しさをバネにまた進化の道を歩み始めるはずだ。

<第1ラウンドの79が響き
6位に終わったエルス>
今日はアウトを34で回った時点までは完ぺきだったんだ。ゴルフの感じは良くなっているよ。
<21位でベストアマのバーンズ>
ベストアマは(来年の出場権を得る)16位よりも意味のあること。夢は終わった。明日、アリゾナ大に戻って授業に出る。
<00年以来2度目の優勝を狙ったV・シンは後半失速し6位>
(12番で1bを外した)パットでリズムが崩れた。12、13番のボギーで流れをつかみ損ねた。
片山37位
○…日本人選手でただ1人、予選通過した片山は37位だった。最終日2つスコアを落としたが「収穫? かなりありますよ」。来年の出場権を得られる16位以内に入ることはできなかったが笑みがこぼれた。課題はパット。「3パットを減らせば戦える。来年も戻ってきます。準備のため日本のゴルフ場に無理言って1ホールだけでもグリーンを硬く速くしてもらおうと思う」と来年の再挑戦を誓った。
なぐさめる友
○…ウッズが3連覇を逃したが親友のオメーラは「いつもうまくいくわけではない」となぐさめた。バープランクも「彼も人間。今日だけかもしれないけれど」と話した。
◆ウエア5位に浮上
最新の世界ランクが発表され、マスターズで初優勝したウエアが10位から5位に順位を上げた。15位だったウッズだが、ランクは変わらず1位。
記録アラカルト
カナダ人メジャー初優勝
カナダ出身の選手では69年マスターズでジョージ・ヌードソンが2位、85年全米オープンでデーブ・バールが2位に入っているが、優勝はウエアが初。
レフティーのメジャー優勝
63年全英オープンのボブ・チャールズ以来40年ぶり史上2人目。
マスターズ優勝者の最終日ノーボギー
ウエアは4バーディー、ノーボギーの68をマーク。最終日ボギーなしで優勝したのは40年ジミー・デマレット、51年ベン・ホーガン、57年タグ・フォードに次ぎ4人目。
マスターズ初のボギー決着
カナダ出身の選手では69年マスターズでジョージ・ヌードソンが2位、85年全米オープンでデーフ・バールが2位に入っているが、優勝はウエアが初。
レフティーのメジャー優勝
63年全英オープンのボブ・チャールズ以来40年ぶり史上2人目。
マスターズ優勝者の最終日ノーボギー
ウエアは4バーディー、ノーボギーの68をマーク。最終日ボギーなしで優勝したのは40年ジミー・デマレット、51年ベン・ホーガン、57年タグ・フォードに次ぎ4人目。
マスターズ初のボギー決勝
プレーオフは90年ニック・ファルド対レイ・フロイド以来、マスターズ史上13年ぶり12度目。ボギーでの勝利は初。1ホール目での決着は82年クレイグ・スタドラー対タン・ポール以来21年ぶり2度目。
カナダ人初の年間3勝
ウエアは今季米ツアー3勝で賞金トップに。68年フェニックスオープン、ツーソンオープンで年間2勝したヌードソンを上回った。
▼東京中日スポーツ
ウエア史上初レフティー王者
マスターズ
【オーガスタ(米ジョージア州)13日櫛谷和夫】レフティーチャンピオン誕生! 男子ゴルフの今季メジャー第1戦「マスターズ」は13日、当地オーガスタ・ナショナルGC(パー72)で最終ラウンド。前日2位のマイク・ウエア(32)=カナダ=が68をマーク、首位と5打差8位から発進し65で回ったレン・マティース(35)=米国=と通貨7アンダーの281で並びプレーオフ。左打ちのウエアが1ホール目で勝ち、大会史上初のレフティーチャンピオンに輝いた。2打差の3位にも同じレフティーのフィル・ミケルソン(32)=米国=が入った。大会3連覇を狙ったタイガー・ウッズ(27)=米国=は75と崩れて通算2オーバーの15位。片山晋呉(30)は通算8オーバーの37位だった。
記録ずくめVウエア
<最終日>▽13日、米ジョージア州オーガスタ、オーガスタナショナルGC(7290ヤード、パー72)▽晴れ、気温24度、弱風▽賞金総額600万j、優勝108万j▽49選手(うちアマ3人)▽観衆4万人
【オーガスタ(米ジョージア州)13日櫛谷和夫】男子ゴルフの今季メジャー第1戦マスターズ・トーナメントは13日、最終ラウンドを行い、通算7アンダーの281で並んだ32歳の左打ち、マイク・ウエア(カナダ)がプレーオフでレン・マティース(米国)を破り、初のメジャータイトルを手にした。マスターズでのプレーオフは1990年以来、13年ぶり。左打ち選手のマスターズ優勝は初めてで、カナダ選手の優勝も初めて。ウエアは賞金108万j(約1億3000万円)を獲得した。米ツアー今季3勝目、通算6勝目。史上初の大会3連覇を狙ったタイガー・ウッズ(米国)は75をたたき通算2オーバーの15位に終わった。日本勢でただ一人決勝ラウンドに進んだ片山晋呉(30)は通算8オーバーの37位だった。
マティース破る
マスターズの"左打ちは勝てない"ジンクスが破られた。幾度となくメジャーVのチャンスを逃し続けているミケルソンではなく、米ツアー参戦6年目のカナダ人、ウエアによって果たされた。
プレーオフに持ち込まれた勝負の行方。1ホール目でボギーながら勝利したウエアは「オーガスタナショナルの日曜に(本戦で)ノーボギーのプレー。これ以上願うことはない」。端正な顔立ちを笑みでほころばせた。
第1ラウンドからの快走も前日は終盤で後退した。が、この日は粘り強く、返しのパットをことごとく沈めた。「4年前、シカゴの全米プロで最終日にウッズと回って80をたたいた」その悔しさからパットの練習を重ねてきたと打ち明ける。
ゴルフを左打ちとするかどうか悩み、13歳の時、ジャック・ニクラウスに「右打ちに変えた方がいいですか」と手紙を書いた。「自分の自然なスイングのままがいい」との返事をもらい、左打ちに徹してきたウエア。この日、マスターズ6勝の金字塔を打ち立てた"恩師"の後を追ってまずは1勝目を印した。
初めてメジャーに勝った左打ちのボブ・チャールズと、過去に全英オープンのその舞台ロイヤル・リザムで一緒に練習ラウンドをしたこともあるという。「このVは家族にも、カナダのゴルフファンにもすごい影響を与えてくれると思う」。カナダ人初のメジャーチャンピオンが、また笑った。
魔のバンカーでマガート脱落
単独首位でスタートしたマガートは、2つのバンカーショットに泣いた。3番パー4ではボールがバンカーの土手に跳ね返り、自らの体に当たるトラブルがあってトリプルボギー。12番パー3ではグリーン奥のバンカーからグリーンを横切ってクリークへ。直後のアプローチも再びクリークに落として「8」。メジャー初制覇の夢が消えた。
マティース満足
プレーオフに敗れたマティースは「勝とうとしたけど、どちらかが負ける。仕方ない」とさばさばした様子だった。現在35歳。15年ぶり2度目のマスターズ出場。最終日の65という猛チャージで舞台の主役に躍り出た。実際は左利きだが、ゴルフは右打ち。「素晴らしいスコアを出せた」と満足そうだった。(時事)
マイク・ウエア(カナダ)
92年プロ転向。米ツアーには98年から本格参戦し、99年のエア・カナダ選手権が初優勝。00年は世界選手権シリーズのアメリカン・エキスプレス選手権、01年にはツアー選手権とビッグタイトルを制し、カナダ選手として初めて世界ランク10位以内に入った。今季はこれで3勝目。計6勝すべて逆転勝ちを演じている。左打ち。カナダ・オンタリオ州出身。ブリシア夫人との間に2児。175a、70`。32歳。
レフティー
ゴルフでの左打ちは極少数派。クラブが圧倒的に右中心に作られることもあって、かつての選手は左利きでも右用クラブを使わざるを得なかった。日本の男子プロで目立つ存在は羽川豊くらい。近年、若手には増えているがまだまだ少ない。ゴルフでは利き腕が強すぎない方がいいという理論もあり、たとえばプロ野球の大打者、ダイエー王監督は左打者でもゴルフでは右で打っている。海外では日本ほどこだわらないというが、アマで1割、プロでは5%未満といわれる。
メジャー2人目
左打ち選手の大会Vは初だが、メジャーでは1963年全英オーブンのボブ・チャールズ(ニュージーランド)以来2人目
プレーオフは12度目
67回の歴史の中で、プレーオフは1990年以来13年ぶり12度目。1976年にサドンデス制が導入されてからは6度目。ボギーによる決着は初めてで、1ホール目での決着は21年ぶり2度目。(共同)
ウッズ15位3連覇ならず
大会史上初の3連覇の夢は、最終ラウンド早々に消えてしまった。ぎりぎりの予選通過から第3ラウンドの大マクリで首位と4打差に接近していたウッズ。この日、2番でバーディーを奪い、猛追のノロシを上げたとたん、3番でつまずいた。350ヤードと最も短いパー4で、ドライバーによる1オン狙いの第1打が右林。ツツジの下から左打ちで脱出も3打目がグリーンオーバーするなど痛恨のダブルボギー。続く4番もボギー、7番では打球に泥が付く不運もありボギーと崩れてしまった。「あれ(3番)は手痛いミス」とウッズ。「3連覇? 簡単なことではないということだよ」。表彰式では笑顔でウエアにグリーンジャケットを着させていたが、今年のメジャー初戦を落としたウッズ、"年間グランドスラム"も来年以降に持ち越しとなった。
片山
(37位でホールアウト)「上位との差は3パットの回数と、惜しいパットが入ったかどうかの差」
▼スポーツニッポン
レフティー初ウエアプレーオフ栄冠
13日午前10時50分(日本時間13日午後11時50分)スタート米ジョージア州オーガスタオーガスタ・ナショナルGC(7290ヤード、パー72)晴 気温20度 弱風 賞金総額600万j(約7億2000万円)優勝賞金108万j(約1億3000万円)参加選手49人(うちアマ3人)観衆4万人
レフティーでは初のマスターズチャンピオンが誕生した。マイク・ウエア(32)=カナダ=がプレーオフでレン・マティース(35)=米国=を下して優勝。左打ちの選手がマスターズで初めて栄冠を手にした。カナダ選手がメジャーを制覇したのも初めて。大会史上初の3連覇を狙ったタイガー・ウッズ(27)=米国=は75と崩れ、通算2オーバーの15位に終わった。片山晋呉(30)は74で回り通算8オーバーの37位だった。
ボギー決着
帽子の右横に描かれたメイプルリーフが誇らしい。「何て言っていいか分からない。信じ難い一日だった。この優勝はカナダのゴルファーとゴルフファンにとっても大きな優勝だ」。カナダ人初のメジャーチャンピオンになったウエアが声を震わせる。そしてマスターズでは初の、メジャーでは63年全英オープンのボブ・チャールズ(ニュージーランド)以来2人目となる左打ちチャンピオン。初ものづくしの栄冠はプレーオフでもぎ取った。
プレーオフは、先に弟2打を左の林に入れたマティースに対し、ウエアは冷静にグリーン中央に乗せていった。マティースは第3打でもグリーンをオーバーさせ、ボギーパットも外した。3パットはしたものの20aのウィニングパットを決めたウエアが両手を突き上げた。
今季3勝目
99年の全米プロ、ウエアはメジャーで初めて最終日最終組を回った。首位に並んでいた相手はウッズ。ウエアは重圧で自分のゴルフができず80を叩いた。2度目のメジャー最終日最終組では、これ以上ない安定したゴルフを披露した。4バーディー、ノーボギーの68。「あの時は決められなかった2.5b以内のパットをきょうは全部決められた」。これで今季3勝目。ウッズを抜いて賞金ランク1位に立った。
13歳の時、右打ちに転向しようか悩んでいたウエアはあこがれのニクラウスに手紙で相談した。「そのままでやりなさい。それが君の自然なスイングなんだから」。その返事を心に刻んで左打ちを続けてきた。「今でもその手紙は持っている。僕にとってはちょっと素敵な物語なんだ」。帝王のアドバイスが生んだ左打ち初のマスターズチャンピオン。ウエアが栄光の歴史に新たな1ヤードを記した。
データ
マスターズでのこれまでの左利き最高成績はフィル・ミケルソンの3位(96、01、02年)。ミケルソン以前では羽川豊が82年にボブ・チャールズ(63年)に並ぶ15位に入り、これがマスターズ記録だった。
ウエアはカナダ選手として初めてメジャーを制した。これまでの最高成績は69年マスターズのジョージ・ヌードソンと85年全米オープンのデーブ・バーの2位だった。また米ツアーで年間3勝を挙げた初めてのカナダ選手となった。
マイク・ウエア
1970年5月12日、カナダ・オンタリオ州生まれ、32歳。99年エア・カナダ選手権で米ツアー初優勝し、00年にアメリカン・エキスプレス選手権、01年ツアー選手権と長期シードが懸かるビッグタイトルを獲得している。これが今季3勝目で通算6勝目。家族はアリシア夫人と2女。1b75、70`。
5差から猛追一時単独首位
マティース充実感
思わぬところから現れた伏兵がグリーンジャケットをつかみかけた。5打差の8位にいたマティースだ。アマ時代の88年以来、15年ぶりのマスターズで会心のプレーを見せる。アウトで3バーディーを奪ったあと、13番で4bのイーグルパットを決めて単独首位。大逆転劇へ突き進んでいた。最後はウエアに追いつかれ、プレーオフではボギーすら逃して敗れたが「ここでプレーするだけでも特別なことなんだ。それにすごいスコアを出せたし、優勝にトライできた。今までで最も素晴らしい日曜日だったよ」と充実感たっぷりに話した。昨年、米ツアー初優勝を飾ったばかり。前週まで賞金ランク68位だった男がウッズ不在の優勝争いを盛り上げた。
片山手応え
順位以上に手応えをつかみ取った。ホールアウトした片山は「去年、おととしは周りが見えないでやっていたけど、今年は、ここにいったらこうなるとか考えながらできた。こういうのを積み重ねていけば何とかなるんじゃないかな」と前向きに話した。この日は中盤まで決まらなかったパットが終盤には見違えるように入り出した。01年の40位を少しだけ上回る自己最高の37位。「今の状態でやれれば(出場権の得られる)世界ランク50位に入れるでしょう」と力強かった。
ウッズ1Wの過ち
「3連覇は思った以上に重圧」
たった1回の判断ミスでウッズの3連覇が消えた。2番でバーディーを奪い、3打差に詰め寄った直後の3番だ。第1打にアイアンを多用していたこのホールでウッズは1Wを握り、右の林に打ち込んだ。第2打は左打ちにせざるを得ない状況。第3打でグリーンをオーバーさせてダブルボギーとなってしまった。4番では3パットでボギーを叩き、優勝争いから早々と脱落。「大きな間違いだった」と1Wを持ったことを悔やんだ。
今季5戦3勝と絶好調で臨んだはずだった。だが、得意中の得意のオーガスタで初日からウッズらしくないプレーが続いていた。第3ラウンドで66をマークして5位に浮上し、3連覇への希望をつないでいたが、勝負の最終日に痛すぎるミスをした。「きょうはショートゲームも悪かった。3連覇は思った以上に重圧だった」。忍び寄るプレッシャーが、卓越したウッズの構神力を微妙に狂わせていた。
2打罰に池ポチヤ…マガート「変な一日」
2打差の首位でスタートしたジェフ・マガート(39)=米国=が2つの大きなミスで初メジャータイトルを逃した。まずは3番でバンカーからの第2打が土手に当たって跳ね返り、体に当たって2打罰を受けトリプルボギー。12番では池に2回落として「8」を叩いてしまった。バーディーは5個も奪っているだけに「いくつかやり直したいホールがある。変な一日だった」と嘆いていた。
3位P・ミケルソン
いいプレーをしたが2人が抜けていた。きょうの68は誇りに思う。落ち込んではいない。(3年連続の3位。左打ちマスターズ初Vをウエアに先を越される)
▼東スポ・その他
ウッズ3連覇失敗
【米ジョージア州オーガスタ13日(日本時間14日)発=森伊知郎特派員】マスターズ史上初のボギー決着の末、レフティー王者第1号が誕生した。春の祭典・第67回マスターズ最終日(7290ヤード、パー72)は7アンダーでならんだマイク・ウエア(32歳=カナダ)と伏兵レン・マティース(35歳=米国)による13年ぶりのプレーオフへ。1ホール目をボギーで上がったウエアが、メジャー初優勝を飾った。大会史上初の3連覇を狙ったタイガー・ウッズ(27歳=米国)は大乱調で2オーバーの15位、唯一の日本勢、片山晋呉(30)も運算8オーバーの37位に終わった。
3番ダボで早々"終戦"
3連覇どころか、ウッズの最終日はティーオフから1時間もしないうちに「終戦」となってしまった。
トップのマガートと4打差でスタートしたこの日のウッズは2番パー5で250ヤードから2Iで2オンさせ、きっちりバーディー。「タイガー・チャージ」の始まりを期待したパトロンからは大きな歓声が上がった。
しかし、この数分後。3番パー4のグリーンで歓声はより大きなタメ息に変わってしまう。
ティーショットを思い切り右に曲げると、ブッシュでスタンスがとれず、左打ちで何とかフェアウエーに戻す。
グリーン手前10ヤードまで運んだこのリカバリーショットは沸いたが、この後が最悪だった。3打目は、おわん形の傾斜の頂上にあるピンを通りすぎて奥のファーストカットまで行ってしまう。
4打目の寄せも傾斜を上りきらず、カラーまで戻ってきてしまい、ボギーパットもカップの右を通り抜ける。
まさに行ったり来たりの、百叩きゴルファー級のダボで一気にイーブンとすると、続く4番パー3でも、10bに乗せた後、50aのパーパットを外す始末。この時点で1オーバーは「Vレースから脱落」と見切りをつけられたのか、コース内のリーダーボードから名前の表示が外されてしまった。
ここまで流れが悪くなると、さすがのウッズもどうしようもない。7番ではバンカーからの3打目がグリーンオーバーして4オン1パットのボギー。続く8番パー5でもグリーン奥からの4打目でも乗らず、連続ボギーを叩いてしまうと、9番でベタピンに寄せてバーディーを奪っても、歓声ははとんど起きなくなってしまっていた。
後半も13番パー5で2オンのバーディーを取りながら、次の14番で3打目のアプローチに失敗して簡単にボギーを叩いてしまう。
過去8勝のメジャーではすべて最終日最終組でプレーして優勝した。逆転Vとなれば史上初の3連覇を達成していたのと同時に、この「データ」も覆すことができたのが、ボロボロの結果になってしまった。前日の3Rでもバンカーから「ホームラン」するなど、素人まがいのミスが目立つだけに、今後が心配だ。
タイガー・ウッズの話
3番でダブルボギーとして、モチベーションを失ってしまった。グリーンはさほど速くないので65を出せば勝てると思っていたんだが。(共同)
天気の読み正解
木曜日までの大雨がウソのように、この日のオーガスタは快晴に恵まれた。今大会は20年ぶりにラウンドが完全に中止になったが、「週末の天気予報はいいから、木曜を中止にしても日曜日には大会を終わらせることができる」と読んだ組織委員会の判断は正解だったようだ。
ウエアが初づくしV
これがグリーンジャケットのプレッシャーというものか。ともにマスターズ、それどころかメジャーの優勝経験もない2人のプレーオフは、完全な泥仕合の様相を呈してしまった。
強烈な打ち下ろしとなるプレーオフ1ホール目の10番(495ヤード、パー4)。この日65をマークして、じっくり練習して準備万端だったハズのマティースが、まず第2打を大きく左に曲げ林へとブチ込んでしまう。
一方のウエアは手堅くピンの事前に2オン。20b近く残したものの、優位に立った。窮地に追い込まれたマティースはアプローチを約8bもオーバー。パーを拾うことすら難しくなった。
だがカナダ人として、レフティーとして、初のグリーンジャケットが見えてきたウエアに今度は強烈な重圧がかかる。ファーストパットがあろうことか3b近くもオーバーしてしまうのだ。
こうなるとマティースもなんとかパーを拾いたいところだが、勝負を賭けたパットはダウンヒルを転がり5bもオーバー。返しも決められず、ダブルボギーが確定した。
ここから2パットでも優勝のウエアは、慎重に刻みボギー。79年から過去5回行われたサドンデスプレーオフでもボギーでの決着はナシ。ワーストスコアの優勝とはいえ、ウエアは両手を突き上げて喜びを爆発させた。
まさに初物尽くしの優勝でもあった。レフティーとしても、カナダ人としても初めてのグリーンジャケット。メジャーの歴史をひもとけば、63年全英OPでのボブ・チャールズの優勝があるだけで、左利きとしては史上2人目の優勝となった。
努力が実った
マイク・ウエアの話
長いこと夢見て、この日ために一生懸命努力してきた。この優勝がカナダの子供たちに夢を与えることになればと思う。
プロフィル
マイク・ウエア=1970年5月12日、カナダ・オンタリオ生まれの32歳。フィル・ミケルソンに続く左利きの実力派。13歳の時、帝王ジャック・ニクラウスに助言をもらい、左打ちのままプレーすることを決意。1992年にプロ転向。米ツアー本格参戦は98年。Qスクールで翌年の出場資格を得ると、99年にエア・カナダ選手権で優勝。母国開催の試合で初勝利を飾った。以後年間1勝を続けるも、昨年は未勝利と苦戦。しかし今季はここまで8戦してボブ・ホープクラシックとニッサンオープンで2勝と復活。特にニッサンではプレーオフを制しており、今回も地味ながら優勝候補の一角だった。身長178a、体重70`。
片山グリーン攻略できず37位
硬さとスピードを増したグリーンに、片山は最後までタッチを合わせ切れなかった。
日本勢ではただ一人予選通過を果たしたのが片山。16位以内に与えられる来季の出場権を狙って34位からスタートした。だが3番で右のラフからグリーンの奥に外すと、アプローチは5bもオーバー。2パットのボギーが先行し、続く4番もバンカーにつかまり3bのパーパットを決められない。これで一気に苦しくなってしまった。
6番で上りの4bをようやく決めてこの日の初バーディーが来たが、アウトを37で折り返した直後の10番でグリーンを外してまたもやボギー。自ら反撃ムードに水を差してしまった。
15番のパー5で寄せワンのバーディーを奪ったものの、上がりの18番では右の林にぶちこみボギー。最終日も課題だらけの一日となってしまった。
それだけに片山も反省しきり。「上位との差は3パット(の数)。10回ぐらいやっちゃった。グリーンの落としどころもようやく分かった。ベテランが活躍しているのはそのせいなんですね」と経験不足を嘆いた。
だが、したたかさで鳴る片山だけに、すでに対策も練り始めている。「来年は(国内で)無理を言って硬いグリーンを作ってもらって(練習してから)ここに来ようかな。来年は2試合くらい(米ツアーを)こなしてから、マスターズに臨みたい」とキッパリ。
パー3で「8」叩きマガート自滅
39歳のベテラン、ジェフ・マガートがアーメンコーナーで沈んだ。首位・マティースに2打差の4アンダーで突入した12番パー3、7Iで打ったマガートの球は左奥バンカーに。スタンスが十分に取れず、球が上げれない状況から打った2打目はグリーン上を激しく転がり、手前の池に入った。動播を抑え切れなかったのか、フェアウエーから打ち直した4打目もまさかの池。6打目でピン左上5bに乗せたものの、1パットで決められず「8」を叩いた。マガートは過去全米プロなどで3位が3回あるものの、メジャーVはなし。念顕の初勝利へ臨んだが、その夢は2発の池ポチャで泡と消えた。
ミケルソン43回目挑戦またV逸
ミケルソンにとって43回目のメジャー挑戦となった今年のマスターズだが、またもや優勝に届かなかった。結局最終ホールのバーディーもむなしく、5アンダー止まり。メジャーの未勝利街道と言えばトム・カイトの72試合、オメーラの59試合、ペイビンの44試合、クレンショーも43試合とまだ上には上がいる。それだけに「こうやってチャンスを作るのが大事。内容も良かったし」と、次の全米オープン(6月9〜15日、イリノイ州オリンピア・フィールズCC)に向け闘志をかき立てていた。

4月16日
「ウッズも人間なんだ」と妙にホッとさせられた今年のマスターズ
岩田禎夫
32年連続のマスターズ取材歴を振り返っても、ここまで天候の悪かったことは記憶にない。きらにNCWO(全米女性組織評議会)のマーサ・バーク会長に代表される抗議行動もあった。
いつものマスターズではない。それを最も感じていたのが3連覇を狙っていたウッズではなかったか。
それでなくとも3週前のベイヒルでは、米ツアー史上3人目となる大会4連覇を成し遂げたが(最終日は腹痛に苦しめられ体重を5`も落とした。
それだけに翌週のプレーヤーズ選手権で11位に終わった時には、優勝疲れと体調不良からくるアドレスの狂いを原因に挙げたほどだった。
マスターズを目前にしてからは「体調も戻ったし、ゴルフも回復した」と語ってはいた。だが、悪天候によるスケジュールの狂いや、グリーンのスピードの変化は、例年にないもの。ウッズの感覚が微妙に狂っていたのは明らかだった。
そんな状況下で、ウッズは初日から76−73。3日目は66が出たが、これは神様が「1日くらいはツキをあげましょう」と幸運を授けてくれたかのように思えてならない。11番で決まった14bのロングパットにしても、13番でクリークに入らなかった第2打にしても、6番の12bにしても、自分の意思でどうにかなったというたぐいのものとは少し違う。むしろツキの産物としか言いようがないものばかりだった。
ウッズは5オーバーで終わった2ラウンド後「イーブンか1アンダーまで戻せれば」と語り、実際そうなった。だが、実情は構えてもしっくりいっておらず、無理に無理を重ねていた。むしろウッズだからこの程度で収まったというのが本当のところだろう。
結果、ツキを使い切ったウッズがいなくなり、マスターズは混戦となった。それはウラを返せば、いかにウッズが実力で抜けているかを証明している。もしウッズがここで勝っていたら、おそらく今年のメジャーはすべてモノにしていた可能性が高い。それだけにウッズも人間なんだ、と妙にホッとさせられるマスターズだったという気もしている。
ウッズのファンには、残念だったに違いない。だがウッズはまだ27歳。この先いくらでもチャンスはある。たまにはこういうマスターズもいい、と感じるゴルフファンも意外に多いのではないか。(本紙専属評論家)