なんかおかしいぞ、ゴルフ界。みんな本質を見失っている
1994/08/04
|||||||||| ©三田村昌鳳 ||||||||||
 
何かの歯車が、噛み合っていない。
近ごろの日本のゴルフ界、なんかおかしいぞ、
という空気が蔓延している。

ことの発端は、トーナメントの人気とその存続だった。
バブルが崩壊して、スポンサーが尻込みをした。現実にバブル崩壊の余波で、トーナメントのスポンサーを降りる企業もでた。アマチュアを含めて、一般的にゴルフそのもののテンポが崩れ、ゴルフ場は、割引券を発行しても、バブル当時の客が入場しないと嘆く。

メーカーは、クラブが売れないと青息吐息。Jリーグ人気に煽られて、ゴルフトーナメントの視聴率低下、ギャラリー動員数低下、それに伴ってスター不足を指摘され、ゴルフの技量そのもののレベルの低さが問われるようになった。
人気挽回とばかりに、選手会はチャリティでサイン会などを開き、テレビ局や協会が話し合って、トーナメントを盛り上げる《策》を練り始めた。賞金が高すぎるという声が噴出した。
そんな折り、ジャンボ尾崎のルール問題に端を発して、選手会がルール講習会を開いた。

まだまだ「なんか変だぞ」という現象はたくさんある。
JGA(日本ゴルフ協会)の鍋島直要常任理事が、女子プロの橋本愛子の髪を切ったという騒ぎもそのひとつである。
けれども、それらの根幹は、いったい何処にあるのだろう、という本質を忘れてはいけないのだと思う。

そんな憤懣や欲求不満、興味の衰退の根本は、トーナメントではいいゲームが見られないというひと言に尽きるわけだ。名勝負は毎週生まれないかも知れないけれど、名勝負がまったくといっていいほど生まれないのも情けない。
Jリーグ人気にともなって、プロ野球も人気が薄れると危惧された。でも、実際は、視聴率も上がったし、面白い試合が続いている。別に、サイン会を特別に増やしているわけでもないし、観客に媚びを売ったわけでもない。ましてやルール講習会を開いてもいない。選手たちは、自分たちの仕事に対して忠実にその役割りを果たしているだけだ。

ゴルフ場は、これまでバブルに乗って、プレーフィがとてつもなく高いコースばかりが乱立しただけなのである。客がこないと嘆くのは、おかしい。高くても客が来るというコースを作ってしまったのだから。
メーカーの新製品の乱発も同じ。本質を忘れて、アイアンセットで40万円以上もするものをつくっておきながら、売れないというのはおかしい。

トーナメントで考え直さなければいけない本質は、まず選手たちが自分たちの仕事と責任をしっかりと果たせば、それだけでいいのだと思う。

この間、NHKの番組で、稲尾和久さんがかつての日本シリーズでの長嶋さんとの対決について喋っていた。その中で長嶋さんのコメントが、僕には強く印象に残った。
「稲尾さんとの対決(最終回の土壇場でキャッチャーフライになった)で、私は、これから先の自分がどうあるべきか問われたと思う。いってみれば、あのことで、打者としての自分の骨組みを考えさせられたし、それをつくってくれた対決だったと思う」

かつては、ジャンボの出現で、杉本英世が
「こいつと優勝争いをしたら絶対勝たせてはいけない。勝たせたら、彼の天下になる」
と思って必死になったという。
青木功とジャンボのライバル物語りにしても、彼らは自分たちの超一流になっていく骨組みをライバルや環境の中で生み出してきた。

いまは、どうだろう。
ヨネックス広島オープンでジャンボが最終日、65をマークして逆転優勝した。ジャンボが強過ぎるのか、ほかの選手がだらしがないのか。その尾崎の優勝、強さに対抗して、負けてたまるかという気迫、研鑽、あるいは敗れた選手たちが自分に問うものが、どれだけあるのだろうか。本質、根幹は、それぞれの選手の姿勢にあるのではないだろうか。これが解消されれば、かなりの部分でいまの「なんか変」という空気、歯車の狂いが正常に戻ると思う。

髪切り騒ぎ。その処分について僕もコメントを求められた。処分が甘いのではないかという見解で、である。でも、甘いかどうかという意見は出せない。何故なら、その本質と根幹が見えないからだ。なんの尺度をもってそれが決められるのかと思う。

それもこれも、選手たちがスポーツマンとしてプロフェッショナルとしての自覚と認識、研鑽、切磋琢磨、いい仕事をしっかりと見せてくれればいまのように《歯車》は狂わない。


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©三田村昌鳳